映画

ある男【誰しもが抱えるレッテル…あなたは他人のフリした事ありますか?】

アタシは割と映画好きな方なんだけど、実はその昔は洋画にばかり興味を持っており、お膝元の日本映画の事をどこか馬鹿にして…それこそ、見もせずに勝手に面白く無いと決めつけていたバカな過去を持っている…

どうもエヂです⎛´・ω・`⎞

確かにハリウッド作品と比べるとその圧倒的なハリウッドマネーの前では霞んでしまうし、アクションだってお金かけられないのは否めない…

だからこそ、浅野忠信さんや真田広之さん、渡辺謙さんなんかの力と志のある俳優さんがアメリカに渡ってしまう…というのは現実としてあって、仕方ない部分なんだけど、アクションでは無く、人間の内面を映し出すような…派手な爆破やロケが無い作品であれば、ハリウッド作品にも劣らない面白さがあったりするんだ…

で、今作「ある男」もそんな派手さは無いけど、何か見入ってしまう作品だったりする…

愛したはずの夫は、全くの別人でした―

映画ある男より

因みに映画「ある男」はU-NEXTで配信中であり、まだ新しい作品なので見放題視聴の対象外なんだけど、1ヶ月視聴可能なプリペイドカード入会で手に入るポイントを使う事で視聴が可能となっている

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あらすじ

夫と別れ、故郷の宮崎で小さな文房具屋を手伝う日々を送る里枝(安藤サクラ)

そんなある日、里枝はお店に度々現れる口数の少ない若者・谷口大祐(窪田正孝)と言葉を交わす…やがて、その後も里枝に絵を見せにきたりと、交流を交わすうちに2人は心を通わせやがて再婚する…

共に心に傷を持つ2人は、里枝の子供と新たに生まれた子供と4人でささやかな幸せに満足して暮らしていた

しかしそんなある日、大祐が仕事中に不慮の事故で亡くなってしまう…

夫は突然、不慮の事故で帰らぬ人となってしまう…

それから1年後…

長年疎遠になっていた大祐の兄・恭一(眞島秀和)が一周忌に現れ、仏壇に飾られた大祐の写真を見て、遺影に写っているのは大祐ではないと話したことから、理枝の夫だった男が、“谷口大祐”ではなく別人であり、本名も経歴もわからない、謎の男“X”である事が判明する…

理枝は謎の男、“X”の正体を探るべく、前夫との離婚裁判を担当した弁護士・城戸(妻夫木聡)と連絡を取り、無くなった夫の身元調査を依頼する…

果たして愛した夫は誰なのか…

映画の見どころ

アタシがこの映画を見ようと思ったのはキャッチコピーの「愛したはずの夫は、全くの別人でしたー」という文言に惹かれた…というのと、主演の妻夫木聡さんに惹かれたから…というところがある

かといって、アタシが妻夫木聡さんのファンである…という事でも無く、その昔はドラマ「オレンジデイズ」くらいから記憶が止まっていたんだけど、つい先日映画「Red」を見て、中年の色気…みたいなのを身に纏うようになった彼が気になったのだ…

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で、実は当初は勝手にこの妻夫木聡さんこそが謎の男なのだ…と思っていたんだけど、実はそうでは無く、彼は役の中ではごく普通の…弁護士…しかしながら静かに…しかし確実に差別を感じながら暮らす在日3世の弁護士という難しい役柄を演じている

テーマを掘り下げると結構重い…

で、妻夫木さんに期待して見始めた映画で安藤さくらさんの演技が良いなぁ…と感じたり…

この方は奥田瑛二さんの娘さんだったと認識してるんだけど、物凄く自然な演技が見るものを魅了する…

何かその変に居そうな感じであり、平凡なんだけどどこか美しい

一方で謎の男「X」を演じる窪田正孝さんに関しては完全にノーマークであり、この方の出ている他の作品は一切見たことが無かったりする

しかしながら、個性的な顔立ちと何を考えているのか分からない感じが今回のミステリアスな役にピッタリだったのでは…と思う

この作品のテーマ

先に結論を言ってしまうと、この作品は耳慣れないワード…「戸籍交換」を描いた映画だったりする

普通に暮らしていると実際にそんな事が可能なのか?と思ってしまうんだけど、恐らくは可能なのでしょう…

この映画で正体不明な「X」氏は結局、戸籍交換を繰り返し、小林から原、原から曾根崎、そして曾根崎から谷口大祐…と、人生で4つの名前を持っていた事になる

劇中では小見浦憲男(柄本明さん)演じる戸籍ブローカーなる人物が登場するが、戸籍交換とは無い誰かを作り上げるものでは無く、これまで使ってきた人生を別の誰かと双方が納得…あるいは片方がブローカーに委任して交換する…という事になっている

双方同意の上で交換される人生…

他人の人生を生きる…と言えば、映画「砂の器」や「太陽がいっぱい」を思い出すんだけど、あれらとの違いは同意の上で交換しているかどうかなんだな…

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後、もう一つこの作品の根底にあるのがレッテルや差別であり、これに関しては妻夫木さん演じる主人公が一番分かりやすい描写で描かれている気がする

「弁護士」と言えば、そう聞けば人が持つ印象というのは苦労の末、苦学の末に手に入れた職業であり、時に「先生」と呼ばれる華々しい職業であるが、同時に主人公の城戸は在日韓国人という差別の対象でもある

恐らくはその在日韓国人である…というその事実が彼の向上心の源になり、そしてそこから逃れるために苦労して弁護士になった…

というのがもう実はもうレッテルだったりするんだ…

実際、彼は何不自由無く暮らしており、いつでも大きな家に引っ越しする事が出来る義理の両親の財力にも守られて良い暮らしをしているし、綺麗な奥さんと子供に囲まれて幸せに暮らしているが、一方でどうやっても消えない在日3世という響きに心の奥底で苦しんでいる

人間誰しも、職業や何かで判断できるものでは無いし、ましてや血液型なんかで判断出来る程単純な訳がないんだ…( ˘ω˘

最後に嫁の浮気を知った時に彼が感じた絶望…それは在日3世に理解を示してくれていた妻の心がもう既に城戸からは離れている事(新しい子供が欲しいから引っ越そうと言った妻が、最後にはもう引っ越しは良いと心変わりした様子でも解る)

映画の冒頭と最後に彼が見た絵はルネ・マグリットの「複製禁止」…そして彼がバーで出会った見ず知らずの男性に語った嘘…

それまでずーっと「X」を追ってきた彼が、最後の最後で「X」になった瞬間…まさにミイラとりがミイラになる姿が印象的…

アタシは人に対して他人のふりをした事は無いけど、例えば英会話教室で仕事や何かを詮索されたりする時に適当に「嘘」をついた事はある…

それは良く知らない人、そして私自身そこまで関わり合いになりたくない人に対してレッテルを持たれるのがイヤだったからなんだろうな…

そう考えると、誰も彼もが持っているものであり、もしかしたら人によっては「X」になってしまった事もあるのかも…ってそんな風に思えたんだ( ˘ω˘

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